小児から大人まで幅広い世代でみられる「食物アレルギー」。その患者数は年々増加し、アレルギー品目も増えてきています。今回は2024年最新版の食物アレルギー28品目について紹介します。
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、食物を摂取した際に身体が食物に含まれるタンパク質等を異物として認識し、自分の身体を防御するためにアレルギーに過敏な反応を起こすことです。アレルギー物質を含む食品の表示は、全ての流通過程にある食品や添加物に必要であることが規定されています。
食物アレルギー表示(特定原材料8品目、特定原材料に準ずるもの20品目)について
世の中にアレルギーの原因物質は多くありますが、食品表示法でアレルギー表示として表示することを定められている食品は下記の「特定原材料」の8品目と「特定原材料に準ずるもの」の20品目、二つの項目を合わせて合計28品目あります。
特定原材料8品目(義務)
「特定原材料」とは、特に発症数・重篤度から表示することが義務付けられています。
特定原材料の当初は「小麦、そば、卵、乳、落花生」の5品目でしたが、平成20年(2008年)に「えび、かに」が追加、令和5年(2023年)に「くるみ」が追加され、現在の8品目となりました。
※落花生はピーナッツと表記することも可能です。
令和5年(2023年)3月9日に「くるみ」が特定原材料に準ずるもの(推奨)から特定原材料(義務)に追加となりました。完全施行は令和7年(2025年)4月1日となっています。
特定原材料に準ずるもの20品目(推奨)
「特定原材料に準ずるもの」とは、特定原材料以外にも症例数や重篤な症状を呈する者の数が相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないものを「特定原材料に準ずるもの」として可能な限りアレルギー表示をするように努めることとされています。
こちらも平成16年(2004年)に「バナナ」、平成25年(2013年)に「ごま、カシューナッツ」令和元年(2019年)に「アーモンド」、令和5年(2024年)に「マカダミアナッツ」が特定原材料に準ずるものに追加されました。また、マカダミアが追加されたと同時に「まつたけ※」は特定原材料に準ずるものから削除されました。2023年3月には「くるみ」は特定原材料(義務表示)に変更になり、現在の20品目になりました。
※まつたけは直近4回の全国実態調査の結果において、即時型症例数で上位20品目に入っておらず、ショック症例数も極めて少ないため。
このようにアレルギーはその時々の世情を踏まえて改訂されています。
特定原材料8品目(義務)
小麦、卵、乳、そば、えび、かに、クルミ、落花生
特定原材料に準ずるもの20品目(推奨)
モモ、オレンジ、キウイ、りんご、バナナ、マカダミアナッツ、アーモンド、カシューナッツ、大豆、ゼラチン、ゴマ、長芋、豚肉、牛肉、鶏肉、さば、鮭、アワビ、いか、イクラ
注意すべきは意図せざる混入(コンタミネーション)
気をつけなければならないのが、特定原材料の意図せざる混入(コンタミネーション)です。
基本的には原料ではないため、アレルギー表示義務はないのですが、アレルギーはごく微量でも発症することがありますので、必要に応じて消費者にコンタミネーション情報を提供することが望ましいとされています。
「本品製造工場では〇〇(特定原材料)を含む製品を生産しています」などのように表記するとよいでしょう。
症状について
食物アレルギーの症状は皮膚や呼吸器、消化器など身体のさまざまな臓器にあらわれます。およそ90%に皮膚症状、30%に呼吸器症状や粘膜症状が認められています。
〈皮膚症状〉
かゆみ、蕁麻疹、むくみ、発赤、湿疹など
〈呼吸器症状〉
くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、咳、息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒュー(ぜん鳴)など
〈粘膜症状〉
目の充血・腫れ・涙・かゆみなど、口の中や唇・舌の違和感、腫れなど
〈消化器症状〉
下痢、吐き気、嘔吐、血便など
〈神経症状〉
頭痛、元気がなくなる、意識朦朧になるなど
〈循環器症状〉
血圧低下、脈が速い、脈が触れにくい、脈が不規則、手足が冷たい、顔色や唇・爪が白い(末梢循環不全)など
これらの症状は、一つだけがあらわれる場合もあれば急に複数の臓器に症状が現れることもあります(「アナフィラキシー」といいます)。アナフィラキシーの症状に、さらに血圧低下や意識障害など急激に全身の症状が進行する場合を「アナフィラキシーショック」と呼び、生命の危険にまで及ぶことがあります。
このほか、食品に含まれる化学物質や、有毒な細菌ウイルスによる食中毒などでも食物アレルギーに似た症状を起こすことがあります。いずれにしても症状が出た場合は、自己判断をするのではなく医療機関を受診しましょう。